日本で子どもの林間学校の説明会に出席したときのこと。
会場には100人近い保護者が集まっていた。先生の説明が終わり、質疑応答の時間に入っても──シーン。誰も手を挙げないまま終了し、静かに解散していった。
一方で、北京で経験した保護者説明会はまったく違った。
参加者は20人ほどなのに、質疑応答が始まると質問が止まらない。
「うちの子、髪が長いんですが、宿泊先のドライヤーでちゃんと乾くでしょうか? ドライヤーは何ワットですか?」
「子どもたちが乗るバスの運転手はどこの出身ですか? 北京の人は運転が荒いから心配で…」
「警備員は何人つきますか?」
質問が次々と飛び交い、時間はあっという間にオーバー。最後は「残りは個別にお願いします」と打ち切られた。
さらに、北京の先生から聞いたエピソードでは、ある学校(幼稚園だったかもしれない)の郊外活動の説明会で質問が殺到しすぎて、行事そのものが中止になったこともあるという。説明会が中止ではなく、行事自体が中止。保護者の関心が高まりすぎて、準備が追いつかずというところだろうか・・・。
日本の「静かな説明会」と、中国の「止まらない説明会」。
どちらが良い悪いではなく、背景にある文化や価値観の違いが表れているのだと思う。日本では「周囲との調和」が優先され、中国では「自分の不安を率直に伝えること」が大切にされる。
同じ保護者会でも、国によってこんなにも景色が違う。
親の心配は文化や習慣によって表れ方が違う。
中国では言葉にして質問することで安心を得ようとし、日本では静かに聞きながら情報を受け取ることで納得しようとする。
表現の仕方は違っても、「子どもを守りたい」「安心して送り出したい」という思いは、どちらも深く、同じである。
保護者会の空気を思い出すと、それぞれの親のまなざしが、静かに、そして力強く浮かび上がってくる。


